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社内失業、スポーツと健康

「『先日起こした騒ぎの説明をしろ』と言われたんですよ。でも、騒ぎなんて起こしてない」社内失業しているMさんに話を聞いた

Mさん(40代男性)は、都内の某大手製造業で働く、現役の社内失業者だ。
「最大手なので、業種を出せばすぐにどの会社か察しがついてしまう。だから業種は出さないで欲しいんですよ」
どの業種かを伺うと、たしかに一番最初に頭に浮かんだ会社だった。
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Mさんは半年ほど前に、事務職から在庫を管理する倉庫業務の担当に配置換えになった。倉庫担当の業務は、大きく重い商品をあちこちに移動させるために、フォークリフトを運転する必要があるという。しかし……
「わたし、フォークリフトの免許を持ってないんですよ。だから、現場では仕事を任せてもらえない。会社に行っても、倉庫の中でぼーっと突っ立ってるか、あてもなくうろうろするか、掃除をするぐらいしかやることがない。
同僚たちからは、
『なんであなたは仕事しないのに、給料を貰ってるんだ?』と嫌味を言われますよ。
こんな状態ですから、職場でも孤立してます。お昼ご飯を食べるのもひとり。他の同僚たちは、仕出しの弁当を休憩室で食べてるんですが、自分だけ外に食べに行きます。お給料も大分減ったので、500円以内に押さえるようにしていますよ。毎日のように牛丼を食べてる。毎日牛丼じゃあ飽きますよね。
正直、つらいですよ。
リストラしてくれたほうが、むしろずっと良い……」

フォークリフトの免許を持たないMさんが、なぜフォークリフトの担当として倉庫に配属されてしまったのか。さらにMさんのお話を聞いていこう。

「私は90年代の前半に、関西の私立大学を卒業して、都内の某大手製造業の企業に新卒で入社しました。初めて配属されたのは、工場でした。いわゆる「技術職」です。
バブルは既に崩壊していたので、景気はあまりよく有りませんでしたが、8時に出社して23時に帰る毎日で、体力的にはつらかった。しかも業務形態はフレックスだったから残業代がつかなかったんですよ。それでも毎月の手取りが20万円ぐらいで、年収は400万円だった。 これからお給料が上がっていくぞと言われていたし、同僚とも仲良くやってました。90年代の頃が一番良かった気がする」

2000年には工場から品質管理の部署へと異動になる。

「生産現場で10年近く働いていましたから、製品についての知識が豊富だろう、ということでの異動だったんですよ。栄転に近かったと思う。うちの会社はISO9001(※品質やサービスについての国際規格)を取得していまして、うちの品質管理部の仕事は、製品がその規格を満たしているかどうかをチェックすることでした。暫くしたら主任にもなれたし、年収も順調に上がってた。当時は500万円ぐらいだったかな」

年収も上がり、出世もし……順調に見えたMさんのサラリーマン生活だったが、あるきっかけで状況が一変する。そのきっかけとは、2008年に起きたアメリカ発の金融危機、リーマン・ショックだった。

「この頃から、私自身、精神的におかしくなってきたんですよ。仕事もどんどん暇になっていった。そういう状況もあって、漠然とした不安のようなものがあったんだと思います。夜、寝付けなくなったんですよ。4日間一睡もできないこともあった。実は今でも睡眠薬を処方されて飲んでいるんですが」

体調を崩したところに追い打ちをかけるように、Mさんは当時の上司から会議室に呼び出しを受ける。行ってみると、人事部の部長が待っていた。

「50歳ぐらいの方なんですが、突然『先日起こした騒ぎの説明をしろ』と言われたんですよ。でも、騒ぎなんて起こしてない。心当たりもない。『心当たりがないんですが……』と言ったんですが、『説明しろ』の一点張りですよ。すごく怖かったですよ」

なぜそのような仕打ちを受けたのか。Mさんは当時を振り返り、「会社はおそらく人を減らしたかったのでは」と話してくれたが、わたしが推察するに、理由はそれだけではないと思う。当時Mさんが体調を崩していたこと、そして内勤として働いていたことが関係するのではないか。つまり、営業部隊と違って利益を生むことができない内勤スタッフは、リストラした時の効果が目に見えやすい。しかも、Mさんは当時体調を崩していた。社内で人を減らしてコストカットを……という話が上がった際に、Mさんは手近なリストラ候補として目をつけられてしまったのだろう。

「その人事部長、次第にわたしの実家にも電話をしてくるようになった。そして、2年前にはついに実家に直接来て、『Mさんは戦力外です』と両親に言ったんですよ。わざわざ新幹線でやってきて。親は70歳過ぎてますから、『どういうことなんだ?』と私に電話してきた時は、すごく不安がっていました」

わたしはこれまでいろいろな方に退職勧奨の経験談を聞いているが、さすがに「実家に会社の人が来て、両親に直接言われた」という話は聞いたことがない。「さすがに非常識だと思いませんか?」と話すMさんの目には、2年前の話しをしているとは思えないほど強い怒りが滲んでいた。

「そしてついに、去年『今この場で会社を止めるかどうかを決めろ』と言われて、退職金も提示された。本当に辞めてほしい、というのが向こうの本音なんでしょうね。私自身も、転職したいのもやまやまなんですよ。半年ぐらい前からハローワークに通っているんですが、 40歳を過ぎてしまうと、本当になかなか難しい。 中途の場合、基本的には即戦力が求められるじゃないですか。でもハローワークの求人は、営業職が多いんですよ。営業の経験なんて有りませんから、いきなり営業と言われるとひるんでしまう。
トラックのドライバーとか、できるのかな……うーん、と踏み出せない。定年までまだ15年もある。年金が受給できる年齢が65歳、70歳と上がっていくと言われていますよね? 私自身、このままでは、ホームレスになっちゃうんじゃないか……と思うこともあります。
今後の見通しですか?暗いですよ……。そもそも、社内で辞めろと言われている上に、仕事がないんですから。上司からの評価は当然、最低です。給料も下がりました。主任からも降格させられて、一番良かった頃と比べると、月10万円ぐらいちがう。 金曜日の夜は、本当に嬉しい。すっきりする。でもまた月曜日が来る……と思うと、憂鬱になりますよ。

今の現場の上司からは『君のやる気の問題だよ』と言われますが、私からすると、今回の異動の件も、退職勧奨に応じない私への嫌がらせとしか思えない。問題があるのは会社の方だろうと言いたくなるのをぐっと抑えてる。上司に『お前こそ閑職に行けばいい』と言いたいのを、ぐっと我慢してる……」

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