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「人事部は『辞めろ』とは言わないんですよ。『どうする?どうする?』って聞いてくる」精密機器メーカーKさんに話を聞いた(前編)

「iPhoneのアプリで、人事部との交渉を録音しました。わざわざICレコーダーなんて用意しなくてもいい。iPhoneをぽんと置いておくだけなら、録音してるかどうかなんて相手には分からないですからね」

今回お話を聞いたKさん(30代・男性)は、会社から退職勧奨を受けた経験がある。現在は退職し、別会社で働いている。
「私の体験をお話することが、退職勧奨を受けている人たちの参考になればいいなって思って、今回のインタビューをお受けすることにしたんです」

”正社員といえども油断できない時代だ” ”大手の社員だっていつ解雇されるか分からない”……メディアを見れば、サラリーマンの危機感を煽るような語句が並んでいる。しかし、会社員の多くは「自分は大丈夫だ」と根拠のない自信を持ってるんじゃないだろうか。まさか自分が「退職しろ」なんて言われるはずないと…。そんな皆さんにこそ、ぜひ読んでほしい。

Kさんは大学院を卒業後、某大手精密機器メーカーに就職した。
「クレーム対応の部署に配属になったけど、ハードワークでした。『故障した』というクレームの入った機器が運び込まれてくるので、電子顕微鏡といった化学分析装置を使って、故障の原因を調べるわけです。『この機器の調子が悪いのは、部品が削れてギヤにその粉が挟まっているからです』というように原因を明らかにしたレポートを書いて、お客さんに提出するんですね。
だいたい帰宅は24時をまわってからでしたが、翌日は朝8時には出社してました。先輩が毎年消えていくようなキツい部署でしたが、上司は『残業時間が長いのは、キミの実力不足だよね』って言うような人で、残業代も全然出なかった。労務局の監査が入るとまずいから、残業時間はパソコンを消すように、メールは受け取らないように、って言われてた。がんばって、がんばって……でもちょっと違うよな……って思ってた。3年目で無理が来たんです」

2008年に体調を崩し、倒れるように1ヶ月ほど休んだ後に、会社との話し合いで異動となる。新しい部署は、機器の設計部署だった。

「設計図を描く仕事ですね。まあ、前の仕事内容とは全然違ったけど、言われた仕事はやれてると思ってた。
退職勧奨を受けたのは、突然というわけでもないんです。2008年、2009年と受注が大きく落ち込んで、業績が回復してきたかなと思ったら震災があった。しかも急激な円高があって、『コストを減らせ』って散々言われていたけど追いつかなくて……という最中だった。『異動とかあるのかな』っていう話は同僚としてましたね」

そのような中、2011年にKさんは最初の呼び出しを受けることになる。ある日、人事部から内線がかかってきたのだ。

「会議室にいったら、ひとり、人事部の偉い人が座ってた。『何の話だろう』って思いましたよ。その人事の人は、ちょっと明るい感じで『どうしたらいいかな? 困ったことになったんだよ。君に相談したい』という感じで、切りだしてきたんですよね。
向こうは『辞めてほしい』とは一言も言わないんですよ。『どうする?どうする?』って聞いてくる。『うちの会社の状況は良くない』『今の部署で働くには、君は能力が足りない』『まだ若いんだし』『他を探すという手もあるよね?』『どうするの?』って……あくまで私の口から、『辞めます』と言わせたかったんでしょうね。そうすれば自主退職ですから。
私は、『今ここで返事しちゃ絶対だめだ』って思った。だから、とりあえず『急に言われても困る』と伝えて、とりあえず休み明けに返事をすることになった」

翌日から3連休だった。口にものが入らない、食欲がわかない……Kさんは、あれこれ思い悩む中、3日で2キロ痩せたという。

「色々な人に相談して、出た結論としては、急に答えを出しちゃ駄目だ、ということ。長引かせるほうがいい。長引かせて、その間に転職先をさがそうと。(増田→辞めることを選んだんですね。会社にはもういたくなかった?)いたくないというより、やっぱり残れないですよね。『辞めませんか』って言われただけでも、精神的にかなりきますよ。でも、辞めてから探すのはリスクが大きすぎるから、それなら、例え窓際族になってもいいから、辞めずに交渉を長引かせて、その間に転職先を探した方がいいと……」

後編に続く

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