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健康で効率的な最低限度の生活

社内失業、ミニマリズム、スポーツ

「新卒でも中途でも、仕事できないって見なすと社内失業にして辞めさせることがあったそうです」社内失業しているHさんに話を聞いた

インタビュー 社内失業

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「退職強要」という手法が企業に広まり、問題となっているのをご存知だろうか。退職強要とはその名の通り、退職の意思がない従業員にたいして、退職を無理に強制する行為のことだ。
Hさん(27歳・女性)は、そんな「退職強要」で仕事を取り上げられ、社内失業してしまう経験をした。
「ある日突然、営業部長に『担当者が変わることになった。仕事を●●に引継ぎしといて』と言われて、当時抱えていた15の案件、全てを手放すことになりました。『あいつは仕事ができないから任せられない』って思われたみたいですね」

結果、Hさんは、3年と11ヶ月籍を置いた会社を退職した。彼女の身に何が起きたのだろうか。詳しく見ていきたい。
Hさんが社内失業に陥ったのは、新卒で入社したマンションの管理会社だ。

「マンションって総戸数が何百もあるようなタワーマンションから、それこそ10戸ぐらいの小さなものまで色々あるんですよ。私が主に担当していたのは50戸~100戸ぐらいの中規模のもの。隣の部屋がうるさいとか、ゴミ出しのルールが守られてないとか、そういう日常のトラブルの間に入って仲裁したり、エレベーターや給水まわりの保守点検、他にも資産価値を維持していくための長期的な修繕計画を組んだり、理事会の規約作成にアドバイスしたり……常駐員としてパートさんだとか、アルバイトさんが入られるのでそういう人員を管理をしたりですとか。仕事は色々あるんですよ。マンションの管理組合と1年~3年の期間で契約して、コンサルティングしていくんですね」

ちなみに同期はおらず、採用されたのはHさん一人だったという。

「うちの会社、ほとんど新卒を採らない企業だったんですよ。しかも女性の採用は歴代でも3人目。営業では私が初めてでした」

自分の力が認められて、嬉しかったに違いない。しかしその期待は早くも崩れ去ることになる。

「配属された営業部は5人くらいの部署。そこのボスでもある50歳の営業部長が、社内でも有名な“パワハラ上司”だったんですよ。オレ様気質で、『自分が会社を大きくしてきたんだ』って自負があったんでしょうね。入社して間もない頃から『女のくせに!』とか『小娘は黙ってろ!』『オレの言うことだけ聞いてればいいんだ!』『お前なんかに何が分かる!』って、とにかく毎日のように怒鳴られました。ちなみに、他の社員にもずーっと怒鳴ってた。でも部長の営業部は売上予算をちゃんと達成していたので、社長も強く言えなかったみたいですね」

中央労働災害防止協会は、以下のようにパワハラを定義している。「職場において、職権などの力関係を利用して、 相手の人格や尊厳を侵害する言動を繰り返し行い、精神的な苦痛を与えることにより、その人の働く環境を悪化させたり、あるいは雇用不安を与えること」。
部長の恫喝は権力を背景にした立派なパワーハラスメントである。しかも「女のくせに」「小娘は黙ってろ」などは女性が不快に感じる性差別的な発言とも取れる。被害は周囲にも及んでいたというし、しかも社長も強く言えない権力者。入社直後からこれでは、Hさんも堪らなかっただろう。
そんな中、彼女が担当するマンションで大きな問題が起こる。これがHさんを社内失業へと陥らせてしまう原因となった。

「掃除清掃員のアルバイトの方が暴走して、私が担当していたマンションの住人とトラブルを起こしてしまったんですよ。具体的には『廊下に放置してあるゴミを片付けろ』とマンション住人の方に強い感じで詰め寄ったらしいんですよね。
現場の人は、基本的にはお客さんと話をしてはいけないという暗黙のルールがあります。私たち営業を通さないで直接やりとりされてしまうと、こちらで責任が取れません。お客さんのほうでも混乱してしまいますから、トラブルの原因でもあるんですね。お客さんが『おたくのアルバイトにこんなこと言われたんだけど、どういう教育してるんだ』って会社に問い合わせてきて、大きなトラブルになってしまったんです。
その事件から数日後、部長に呼び出されました。『担当者が変わることになった。仕事を●●に引継ぎして』って。その一言で、当時抱えていた15の現場の全てを手放すことになったんです。
後から知ったんですが、新卒でも中途でも、仕事できないって見なすと私と同じように社内失業の状態にして、辞めさせることがあったようです。まわりの先輩や同僚も、そういう人達を見てきてるから『あーあの子もか』って感じで、遠巻きに眺めるだけで助けてくれない。次第に社内で誰とも深く関わらないようになって……」

もしHさんに過失があったとしても、仕事を全て取り上げる必要はないはずだ。ましてや部下のミスをフォローするのが上司の仕事ではないのか。
しかもHさんのお話から察するに、部長の独断で、度々気に入らない社員に対して退職強要が行われていたことが推察できる。
かなり悪質な管理職だったのではないか。

「お昼ですか?営業部もそんなに大所帯じゃないので、部の5人全員で行ってました。パワハラ部長が『飯行くぞ』って音頭を取るんです。でも社内失業してからは、私だけ誘われなくなったんですよ…。お弁当を作ってきたり、近くのコンビニで買ってきてオフィスで一人で食べるようになりました。最初のうちは、実は開放感でいっぱいでした。私は食べるスピードがすごく遅いんですけど、部長はすごく早い。私の食事が終わるまで待ってもらうのはすごく気を使うんです。だから部長とご飯を食べるのが嫌だったんですよ。まあでも、ずっと一人で食べることになっちゃったので、ちょっと寂しかったんですけどね」

こうして仕事を失ってしまったHさんにできることは、暇つぶしをして時間を潰すことぐらいだった。

「社内失業しているとはいえ、周囲の目もありますので、堂々とネットを見たり暇つぶししてるわけにはいかないんですよね。だから適当な数値が入ったエクセルを開いて作業しているふりをします。mixiだとかtwitter、yahooニュースをよく見てましたね。後ろに人が来たときのために、親指をキーボードのaltキーに、中指をtabキーに置いておいてエクセルをいつでも表示できるようにしておくわけです(注:windowsではaltキーを押しながらtabキー押すことで表示ウィンドウを切り替えることができる)。社内失業者の方なら、誰でもやってることじゃないですかね?
周りがおじいちゃんばかりで、エクセルとかワードとかがよく分からない方ばかりでしたので、『これを清書して』くれと言われて手書きのメモを渡されたりとかはありましたね。まあ5分もかからないようなちょっとした内容ばかりでしたけど。頻度は2~3日に1回あるかないか。『いつまでに必要な書類ですか?』と聞いて、期限ギリギリまでやってるふりをしてネットサーフィンをしてました。すぐ終わらせないんですよ。何もやることがなくなっちゃうので……。
そんなだから、定時になると同時に席を立ってました。残業をすることが偉いという社風で、帰りづらい雰囲気はありましたけど、『関係ないや。いてもいなくても一緒でしょ』って思ってました」

Hさんの社内失業期間は長く、半年間にも及んだ。

「社内失業のストレスは、パワハラされているときより、個人的にはキツかったですよ。
パワハラを受けていたときも、仕事は嫌でしょうがなかったですけど、やらなきゃいけない仕事が積み重なってくるから、余計なことを考えてる暇が無いじゃないですか。仕事がなくて暇だと時間ができるから、色々考えちゃう。そうすると、どんどん気分が滅入ってくるんですよ。
社内失業中は、胃が常に痛かったですね。だからご飯が食べれなくなっちゃった。でも逆に暴飲暴食しちゃうこともあるんです。晩ご飯で丼ご飯の後にカップ麺、コンビニのフライドチキン、おやつも数種類を食べて、みたいな感じ。今考えると恐ろしいですよね…」

食欲がなくなったり、かといえば食べ過ぎてしまったりということを何度も繰り返していたというHさん。ストレスによる過食や拒食などの摂食障害に至る一歩手前のように見える。

「社内失業してから2週間で体重が6キロ減りました……。洋服のサイズが合わなくなって、ズボンをベルトでギューっと締めなきゃいけなくなっちゃった。会社の人とはまともにコミュニケーション取れてませんでしたから、6キロ痩せた時も『あれ、夏痩せ?夏バテじゃない?』なんて聞かれました。見て見ぬふりだったのかな。でも、もしかしたら本当に気づいてなかったのかもしれませんね。心配かけちゃうと思ったので、家族には言えなかったです。結局、退職した今も社内失業してたことを言えてません……」

社内失業に陥るのは能力の問題だ、ヤル気の問題だ、本人の責任だ……そう思っている方も多いのではないだろうか。Hさんのケースをどう思うだろうか?

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