読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

健康で効率的な最低限度の生活

社内失業、ミニマリズム、スポーツ

「俺の部下に勝手に仕事を与えるんじゃない!! 押し付けてサボるつもりか」社内失業しているSさんに話を聞いた

インタビュー 社内失業

f:id:shanaineet:20121126222532j:plain

「縦割り」という言葉を聞いたことがあるだろうか。セクショナリズムとも呼ばれる、縄張りや派閥にこだわりすぎることで互いの情報共有を妨げてしまう、「部署間の壁」のことだ。
この「縦割り」組織の弊害が、社内失業を生み出す一因となってしまった例がある。
Sさん(28歳・男性)は、都内商社に勤める正社員。「旅行が趣味です」というアクティブな人で、体格もがっしりしていて、ニコニコ笑顔を絶やさない爽やかな男性だ。Sさんは新卒で入社した当初から、社内失業に陥ってしまったという。詳しく聞いていこう。

「担当の仕事が何もなかったんですよ。ほんとうに何もない。仕事を振られるわけでもないし、なにか指示されるわけでもない。ただひたすら自分の席に座ってる状態ですね。
朝会社に行くと取引先からFAXが来てるんです。自分が一番下っ端なので、周りに配る。仕事って言えばこれぐらいです。こんな状態が、毎日続きました。
『何かお手伝いできることないですか?』って課長(上司)に聞くんですけど、毎回『今はない』『特にないな』って言われちゃうんです。まぁ課長本人も、いつも定時にはササーっと帰ってましたし、かなり暇してたんじゃないでしょうか……。
その状況を見ていた違う課の先輩が、不憫に思ったのか仕事を振ってくれたことがあったんです。
喜んで引き受けましたよ。
お昼ごろ、その先輩からもらった仕事を処理してたら、課長が来て『なにやってんだ』って聞くんですよ。『●●さんから頼まれた仕事をしていて……』って説明したら、急に怒り始めたんです。
フロア中に響き渡る声で、その先輩に向かって『俺の部下に勝手に仕事を与えるんじゃない!! 押し付けてサボるつもりか!!』って……。一瞬で社内が凍りつきました。『俺が指示した以外の仕事はするな』って、私も怒られました」

まさに縦割り組織の弊害を象徴するようなエピソードだが、事態はこれでは終わらなかった。

「それ以来、周りの先輩達が私に仕事を振りづらくなっちゃったんです。ただでさえ新人で、担当業務もない状態だったのに、周りから何も教えてもらえなくなってしまって。
その先輩も、別に私に仕事を押し付けてサボろうとしてたわけじゃなくて、ほんとに親心から仕事を任せてくれたんだと思うんですよね。それがこんなことになるなんて……」

そんな状態が8ヶ月ほど続いたが、ある時Sさんに転機が訪れる。同じ部署の、30代の女性の先輩が寿退社し、それ以来仕事を割り振られ始めたのだ。

「その仕事をだれが引き継ぐかって話になって。じゃS君が暇そうだから、やってね、みたいな感じで仕事を割り振られ始めたんですね」

ただ、結局与えられた仕事はデータ入力や、数値的なチェックなど、比較的簡単な雑務が多かったようだ。

「他にも、先輩たちから徐々に仕事を振られるようになったので、それを処理する関係で残業することもありました。
さきほどお話しした課長の事件があったせいで、課長が社内にいるときは、先輩たちも私に仕事を振りづらかったみたいなんですが、いなくなっちゃえば関係ないんですよ。課長は6時半の定時になると『お疲れさま―』って帰っちゃいますから、そうすると先輩たちが『これやってくれない?』って私に仕事を振ってくる。だからどうしても、残業して処理しなきゃいけない。バレちゃうと、前みたいに課長がキレちゃうかもしれないですからね。悪いことしてるわけじゃないんですが、昼間はネットサーフィンをしていて、定時過ぎたら本腰入れるぞ、みたいな。逆ですよね普通……」

そんなSさん、実は2度、社内失業を経験しているという。

「2度目の社内失業は、2009年の1月から7月までの、半年ぐらい。原因は、会社の経営状況が悪化して、仕事が無くなったからです。
気持ち的には、入社すぐに社内失業になった時よりも全然ラクでしたよ。『ああ、こういうこともあるよね』って。でも逆に、経営状態が悪化しちゃって、この会社大丈夫かな……と、それが不安でした。
新規事業をやろう、なんて話が社内で出たこともありましたが、結局なにも進みませんでした。
社長から直接『危ない』って言われたわけじゃないんですよ。でも小さな会社ですし、社長室もないので、役員と社長がしゃべってると色々と漏れ聞こえてくるんですよ。隠す気もないのか、普通に喫煙所で会社の財務状況についてしゃべってたりしますしね」

しかも当時はSさん以外にも社内失業者化した者が何人かいるという。会社の状況は相当厳しかったのだろう。

「他部署でも、明らかに暇な人というのが、何人もいるわけです。『〇〇部の××さんて、いつもネット見てるよね』とか『あの人いつもゲームやってるよね』とか、話題にものぼるんですよ。
自分含め、何も仕事ない人は、30人中……4人はいたんじゃないかな。定年間近の人が一人と、自分と、あとは若手が二人。新人はノウハウもないし、担当のアイテムごとに縦割りになってるので、他の社員に『何かやりましょうか』って言うこともできないですし」

Sさんが入社した直後の状況とそっくりである。

「私ですか?残念ながら陰で『あの人、いつも仕事と関係ないブログばっかり読んでるよね』って言われてた可能性はありますよね。でも直接嫌味を言われたり、意地悪されたりというのは、自分が気がついてないだけかもしれないけど、ないですね。
なんていうか、会社って頭悪いですよね。人が足りないからって沢山採って、景気悪くなったから沢山余っちゃって人件費が大変……なんて、そんなの考えればわかるじゃないですか。
なんで景気の良い悪いに関係なく平均して何人ぐらい採ろう、って発想にならないのか不思議でしょうがない。絶対アホですよね。ほんとアホなんだと思う」

Sさんの言葉には怒りが滲んでいた。

「今のご時世、サボりたくてサボってる人というのは、いないと思いますよ。色々とスキルだとか経験を身につけておかないと、若いうちは誤魔化せても、先々大変だというのは誰の目にも見えてるわけですから。
一週間のうち一日だけ暇だとか、それぐらいなら息抜きになるしいいでしょうね。ただ、ずーっと暇っていう状態を望んで作りたい人なんて、いるんでしょうかね?」

関連記事: