健康で効率的な最低限度の生活

社内失業、スポーツと健康

「高校生の頃の楽しかった思い出とか、そういうのを思い出したりして、なんとか凌いでます」社内失業しているYさんに話を聞いた

f:id:shanaineet:20121123005213j:plain

Yさん(男性・29・仮名)は紺色のスーツに黒縁眼鏡をかけ、身長は170センチほど。ニコニコして温厚そうな男性だ。
「遅れてしまってすみません、残業が少しあったもので」
とても丁寧に頭を下げた。社内失業者なのに残業? 矛盾している気がする。

「全く仕事がないわけではないんです。たまに上司から雑用を振られることがあります。定時が18時なんですけど、17時55分に『ちょっと宅配便出してきて』って言われて…。すごくむかつきます。今日は7時間55分暇だったのに、どうして最後の5分でって。でも我慢してます。仕事ですから。一応、残業代もつくので…」

Yさんは、従業員2000人の人材派遣大手で働いている。
「某マスコミの関連会社ですので、福利厚生もしっかりしていたし、なにより提示された給料が一番高かったので、2008年4月に転職で入社しました。
内定が出た後の人事担当の方との面談で、『山田さんの部署ですと、見込みの残業代込みで月30万円、ボーナス含めると年収500万円ぐらいになります。社歴に応じた昇給制度もあります』と言われて、舞い上がって即決ですよ。
ただ、今思えばもうちょっと疑問に思ってもよかったかもしれません。基本給が14万円しかないんですよ。見込みの残業代と、もろもろの手当ををプラスすることで月30万円だったんです。その時は、まさか残業時間がほぼゼロになるなんて思ってませんでしたから」

Yさんは、リーマンショックの影響で仕事の無い部署へと異動となり、社内失業してしまったそうだ。どのような会社生活を送っているのだろうか。

「私の現在の、最も重要な仕事は、郵便物を出すことです。上司に『これ出しといて』と、取引先に送る書類を渡されますので、封筒に入れて、宛名を書きます。ビルから徒歩2分の郵便局まで歩いていって、『速達でお願いします』と言ってお金を払う。多いときは1日に2度出しに行くこともありますね。あとは同じように宅急便を出しに行くこともあります。これは社内の総務部にダンボールを持っていって伝票を書きます。多い時で、月に1~2回でしょうか。どちらも10分程度あれば終わる作業です。

『どうせ暇なら、郵便代がもったいないから歩いて届けてきて』って、歩いて30分かかる取引先まで、郵便物を徒歩で届けさせられたりもしました。書類を送るのなんて、同じ都内なら速達でせいぜい390円とか、そのくらいじゃないですか。それを往復1時間かけて歩いて届けるんですから。悔しいですよ。

ある日取引先の人に聞かれたんです。『いつも直接届けに来ていただいてますけど、こちらの方面に何か用事があるんですか?』って。私もバカ正直に『いえ、経費削減らしくて歩いて届けてるんです』って言ったら目を白黒させてました。『山田さんの人件費を考えたら郵便の方が安くないですか?』って。返す言葉がなくてヘラヘラ笑ってしまいました。

あと、データをDVDに焼く仕事もあります。これは不定期ですね。何ギガもある大きなファイルをDVDに順次焼いていくんですね。1枚焼くのに10分はかかりますから、10枚ぐらい焼くとそれだけで2時間はかかります。
ただPCの性能が悪いのか、焼いてる最中はネットサーフィンできないんですよ。フリーズしちゃうので。だから本当に暇ですね。ひたすらボーっとするしかない。煙草を吸いに行ってもいいんですが、エラーが出ることもあるので、席を立てないんですよ。高校生の頃の楽しかった思い出とか、そういうのを思い出したりして、なんとか凌いでます。

スキルが身につくような仕事は皆無ですね。上司はいくつか仕事を抱えているようです。SNSをよく見ているので忙しくはなさそうですが、それでも何か仕事を振って欲しいです。もしかしたらわざとくれないのかもしれません。私はいらない社員なんだということを日々痛感してます」

Yさんは転職活動もがんばっているが、「全然ダメですね」と言う。

「有休は取りやすい職場なので、面接を受けやすいそこは助かってます。狙っているのは前職のスキルを活かせる会社です。でも、半年で30社ぐらいに履歴書を送って、面接まで行ったのは10数社。2社だけ二次面接まで行きましたが、それ以外は全部一次面接でサヨナラです。

一応経験者ですし、面接に行ける率は高いみたいです。ただ面接で『今のお仕事について聞かせてください』なんて言われるともうダメですね。正直に『今はほとんど仕事がなくて…』と言って次呼ばれた会社はありませんから、少し嘘を混ぜながら話すことになります。どこかでバレちゃうんでしょうね」

就業中に、こっそり会社を抜け出して面接を受けたこともあるという。

「ちょうど会社の近所だったし、有休も残り少なくなっていたので。どうせバレないだろうと。
夕方抜け出して、普通に面接を受けて帰ってきました。1時間半ぐらいですね。誰にも、何にも言われませんでしたよ。職場にいると、自分が書き割りみたいに思えてきて、実は存在してないんじゃないかって。落ち込むこともあります。

もう今年で30才なので、日々焦ってますよ。前職の業界に戻ろうにも、業界的には30才といったら管理職になりはじめる時期ですから。しかもこの不況でしょ。これから雇用が劇的に回復することなんてあるんですかね?

以前の前向きだった自分はどこに行っちゃったんだろうって、思いますね。仕事に対してやる気が出ない。ちょっとした雑用も、めんどくさくてしょうがない。封筒に書類を入れて宛名を書くだけなのに、30分ぐらいかかることもあります。命令された雑用を『ハイハイ』ってやるだけ。小学生でも教えれば出来ますよ。こんな状態で転職して、はたしてちゃんと働けるのか。それは自分でも心配です」

関連記事: